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穴井文彦:ライフ×ワーク

Vol.7 日々是葛藤

日々是葛藤
「風立ちぬ」を観ました。
宮崎駿さんの映画はよく観ますが、今までは家族につきあって観る感じでした。今回は初めて私が観に行こうと言いました。そこに「仕事」が描かれているような気がしたからです。仕事で理想を追求する男のドラマが見られるのではないかと思ったからです。
実際に観てみると、私の想像したものとは少し違いました。しかし、かなり心が揺さぶられました。仕事における「理想」ではなく、「葛藤」と「矛盾」が描かれていたからです。

この映画には戦前の飛行機がたくさん登場します。飛行技術が確立される前の、夢と妄想と勘違いがごちゃ混ぜになったような奇妙な飛行機ばかりです。今ではあり得ない独創性にあふれています。しかし、大きな戦争が始まり、飛行機に求められる用途と機能が明確になりました。急速に形が洗練され、兵器としての力が飛躍的に向上します。
主人公の堀越二郎は美しい飛行機づくりのために一直線に突き進みます。その理想のためにすべてを犠牲にして働きました。やがて素晴らしい飛行機ができあがりました。しかし、それは戦闘機であり、その飛行機が戦争で大きな戦果を上げ、結果としてたくさんの人が死にました。主人公がこの事実をどのように捉えていたかの描写はありません。しかし、この理想と現実の葛藤がこの映画の主題のひとつであると私は感じました。

仕事に没頭することは悪いことではないです。自分の想いを仕事に注ぎ込むことで、素晴らしい成果を残すことができます。周囲のことに目もくれず、自分のしたい仕事だけに集中できるとしたら、それは理想的な仕事環境と言えるでしょう。しかし、没頭すればするほど、自分の仕事が周囲にどのような影響を与えているかが見えなくなります。見えなくなるのではなく、見なくなると言った方が正確かもしれません。特に企業の中で働いていると、企業内の論理だけで物事を考えようとしがちです。その方が楽だから。
しかし、それに慣れ過ぎると時に大きな問題を引き起こします。企業における事故や事件は多くの場合、葛藤から目をそらしていたことが遠因です。
現実の社会には葛藤や矛盾があふれています。企業に留まっていては見えないものがたくさんあります。そういう意味でも、もっともっと外へ出て行かなくてはと思います。

「風立ちぬ」は夢で始まり、夢で終わる幻想の物語です。今回はファンタジーではなくて歴史に基づくリアルな話という評判でしたが、とんでもない。これは徹頭徹尾、仕事人にとってのファンタジーだと思いました。それも日々、仕事に疑問と葛藤と矛盾を抱えている人たちにとっての。

2013/10/09

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