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元町映画館☆特集

フィンランドの巨匠、アキ・カウリスマキ監督最新作『希望のかなた』

人の出会いがこういう奇跡をうむんだと。全く違うからこそ生まれるものがある!

私事ですが、最近一つ歳をとりまして、世の中のことに以前よりも興味・関心が高まってまいりました。一方でおっさん化もしている訳です。歳は取りたくないもんです。

しかし、この映画に今であえて良かった、そんな作品をご紹介します。
フィンランドの巨匠、アキ・カウリスマキ監督最新作『希望のかなた』

【あらすじ】
シリア人のある青年がフィンランドのヘルシンキに流れ着いた。そこで生活するために難民申請を行政に申請するが担当のスタッフは「申請するのは自由だ。ここにはそんな奴らがいっぱいいる」とつっぱねる。ある日、審査を受ける青年。結果は難民として受け入れられずトルコへ強制送還されることに。彼には目的があった。それは唯一の肉親である妹を探し出すこと。シリアから一緒に逃げる途中で行方不明になってしまったのです。送還当日、彼は決意し宿泊していた施設から逃げ出す。行くあても無い彼が辿り着いたのはあるレストランのゴミ捨て場。そこで彼はそのレストランのオーナーに偶然出会い...。

カウリスマキといえば、知る人ぞ知る映画監督でしたが、本作が公開されるやいなや、瞬く間に全国にその名前が知れ渡りました。その証拠に某大手ネットショッピングサイトでは彼の旧作がいきなりプレミア価格になっていました。ふるえました、その跳ね上がった金額に。本作は前作の『ル・アーヴルの靴みがき』という作品から続く「難民3部作」の第2作目。当初は「港町3部作」と言う構想があったそうですが昨今の世界情勢、特に難民問題に焦点を当てて、テーマを変更したそうです。

カウリスマキ作品常連の俳優陣と「難民」というおもたくなりがちなテーマを独特の演出とフィンランド、そして日本音楽(なんと歌謡曲!!)を取り入れて描かれる人類愛、人間愛。みんな誰かに生かされている。誰かを助けて生きている。「助け合い」なんて言葉がありますが、まさにその言葉がぴったりの作品。

「難民」問題を他国のできごと、夢物語にしているわけではありません。シリア人青年を追い詰めていくネオナチ。部外者が出て行けといわんばかりに暴言や暴力をふるいます。「難民は出て行け」そのような考えを持っている人も事実としていることを突きつけてきます。そんな場面でも救世主は現れますが、暴力に暴力で訴える...このシーンだけはちょっとカウリスマキらしくないなと。しかしその場面を見て「スカッとする」、そう思ってしまった自分に少し腹が立ってしまいました。

終盤にはカウリスマキの日本愛?が爆発するシーンがあります。それは「スシ」。なんのこっちゃ分からない人、ごめんなさい。目の前にある問題を茶目っ気、思いつきで解決できてしまうところはさすが西洋、映画の持つ魅力でしょうか。日本ならありえないだろうと言いたくなるところですが、外国人が日本の法被を着て「スシ」を握るだけで笑えてきます。カウリスマキが言いたかったのかも知れません、「人の出会いがこういう奇跡をうむんだと。全く違うからこそ生まれるものがあると」。私はこの映画をみてもっとカウリスマキ監督作品をみてみたくなりました。そしてもっと前向きに生きていこうと思いました。しんどいこともそりゃありますが、1つ歳を取ってちょっと背伸びして遠く、将来を、世界を見る、楽しみがまた増えました。カウリスマキ監督に感謝!!

『希望のかなた』
(監督・製作・脚本・美術:アキ・カウリスマキ/2017/フィンランド/98分)
上映スケジュール
1/27(土)~2/2(金)
14:20~
2/3(土)~2/9(金)
13:50~
2/10(土)~2/16(金)
15:20~
2/17(土)~2/23(金)
17:40~