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元町映画館☆特集

カンヌ映画祭で歴代最高評価を獲得した、究極のミステリー。 『バーニング 劇場版』

原作は村上春樹氏の短編小説。

こんなお話。

大学卒業後、小説家を目指す青年イ・ジョンス。彼は運送会社でアルバイトをして生計を立てていた。ある日、街を歩いていると若く綺麗なコンパニオンのシン・ヘミに声をかけられる。彼女とは幼なじみ。聞けば彼女は整形をし、アルバイト代でアフリカに行きたいという。二人は夜に飲みにいく。そこで勉強中のパントマイムを披露するヘミ。「みかんがあると思い込む。みかんがないことを忘れれば良い」と言う。互いの距離は縮まり、二人はセックスをする。数日後、アフリカから帰ってきたヘミの隣には何をやっているか分からないが、裕福な男性ベンを連れていた。ジョンス、ヘミ、ベン、3人の奇妙な関係は続くが、ある日、ヘミとの連絡が取れなくなり…。

韓国の名匠、イ・チャンドン監督。素晴らしい。約150分、明確な起承転結があるわけでもないのに引き込まれる。いや、それも作品の中に散りばめられる謎のせいか。猫、ピンクの腕時計、井戸での体験、確執のある父など。どれも物語の肝になりそうな言葉、できごとばかり。主要な登場人物も多くを語りたがらず、沈黙も多い。何より裕福なベンはジョンスと同世代にも関わず、高級車を乗り回し、知識人たちとパーティをする。貧富の差さえ恐怖の対象となる。自分にとっては夢のような生活を送る彼はある趣味をもっていると暴露する。ここからさらに物語は混沌とする。

謎を解決していくのも面白い。難解だからこそ、映像や音、登場人物の動きで解決した時の喜びはひひとしおだ。謎をひもとく快感。点と点が線になった瞬間。そんな一瞬が終盤に待ち受けている。


映像に刻まれる情景も本作の見どころの一つ。特に主役3人が夕日を見ながら、それぞれの持つ強みと弱みを披露する。ある人は秘密を、ある人は恋人への想いを、そしてある人はパントマイムを…。このシーンだけでもずっと観ていられる。永遠に続いて欲しいと思ったほどだ。感情は混ざり合うことはせず、水と油のように漂い続ける。夕日の光がその感情を鮮明にする。そして何事もなかったように映画は続いていく。この映画で観ることのできない表現の数々。2019年必見の映像になるに違いありません。自然光はこんなにも綺麗で映像に深みを加えるんだと。


また韓国映画にとんでもない傑作が生まれました。映画の楽しみ、さらに広がる『バーニング 劇場版』、ぜひ劇場でご覧ください。
バーニング 劇場版
(監督:イ・チャンドン/2018年/韓国/148分)

上映スケジュール
3/2(土)~3/8(金)
14:50~
3/9(土)~3/15(金)
12:40~