元町映画館☆特集
ドキュメンタリーという言葉はこの映画から! 『モアナ 南海の歓喜』
100年のときを超えてスクリーンに蘇ったドキュメンタリー映画の元祖にして傑作
「人間が生きること、生活を送ることがどれほどドラマチックであることか」
ーロバート・フラハティ監督
ぐうしびれるこの監督の言葉。
その島に寄り添い描いたからこそ感じたことなのだろうか。今回はドキュメンタリーと言っても想像できうるような、ドラマがあるものじゃありません。あえて言うなら「島そのもの」。カメラを持って、ONにすれば誰でも“監督”になれるこの時代。そんな時代だからこそ、ぜひ見て欲しい、呼吸している本作を。
こんなお話。
1926年。ドキュメンタリー映画の開拓者/始祖、ロバート・フラハティ監督の長編映画。画面いっぱいに広がる映像、楽園のような南の島、サモア独立国のサヴァイイ島で全編撮影、そこに暮らす島民、島の自然が穏やかに描かれる。
「ドキュメンタリーの父」と言われるだけであって、どんなものか…期待していた私。画面に広がるのは島民の生活。チャプターごとに分けられたエピソード。ドマラチックな展開は無いにも関わらず、画面に広がる映像に惹きつけられる。本作は公開された時は批評文(ジョン・グリアソン)の中で、初めて「ドキュメンタリー」と解説されたそうだ。
自然とともに生きる島民の人々の暮らしは現代のモノが溢れている時代とは真逆をいく。特に印象深いのは長男モアナとフィアンセのファアンガセという婚約者との祝祭の儀式。それまでの島民の映像とは一変し、一気に島がお祭りムード一色になる。喜びに満ちた島民。新郎新婦も照れながら喜びを爆発させる。観ているこちらも嬉しくなるのは映像/映画の持つ力なのかと。力強い映像の合間に島の風景表情が優しく語りかけてくる感じだ。
静かな生活の中で聞こえてくる自然の声/音。生きていく・暮らしていくことを正面から捉えた映像の数々はどこか懐かしく、鮮明に残る。もっとこの映像の海に浸かっていたい。