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元町映画館☆特集

半分はわたしに、半分はあなたに『ハニーランド 永遠の谷』

北マケドニアの小さな養鶏家の女性の暮らしを追ったドキュメンタリー

(c)2019, Trice Films & Apollo Media
(c)2019, Trice Films & Apollo Media
北マケドニアの小さな養鶏家の女性の暮らしを追ったドキュメンタリー。

ハイ来ました。
私、今のところ、今年の洋画ドキュメンタリーベスト1位です。
あんまり映画観てないんじゃねぇ?と思う方もいらっしゃると思います。はい、たしかにそんなに観ていないかもしれません。
が!!、この映画には終始、生命力、なにか生きようとする前のめりな想いが伝わってくるのです。

こんなお話。
北マケドニアの首都スコピエから20キロ離れた、電気も水もない故郷の谷で暮らす養蜂家の高齢の女性と寝たきりの盲目の老母。自給自足で生活している彼女たち。谷を離れて暮らす機会もあったというが、タイミングも悪く今に至る。平和そのものといったその暮らしの中に響く、エンジン音。けたたましい音に連れられてやってきたのは7人の子供を持つ家族だった…。

3年と400時間かけて製作された本作。そして絶妙な86分という時間。これを観ただけで、知らない世界を知れる映画の醍醐味を味わえる。この映画に悪い奴は出てこない。誰もが生きるために自分の仕事を全うしようとする。女性は老母とともに生きるために、養蜂を淡々と続ける。煙で燻し、蜂は自由に飛び回る。そして蜜を採取する。注意点に取りすぎないこと。次にお世話になるために、欲を出さない。家に帰っても話すのは過去の美談や結婚話。これからの展望は特にない。新しいこともない。谷での生活に今のところ、不自由はないように見える。でも何かモヤモヤする。

女性は町に出て、蜂蜜を売りながら生計を立てている。たまに装飾品、アクセサリーなどのお洒落を楽しむ。谷、町での彼女の人間らしさが表現されている。

そして移住してきた家族。女性にとって、それは新しい刺激。でもそれは初めだけ。彼女の生活を脅かす存在。育ててきた土壌を荒らし、好き放題にはちみつを採っていく。方法が確立されていないからかなり乱暴なシーンも見受けられる。彼女の抵抗むなしく、それは継続されて、一方で突然何事もなかったように退散していく。「採った蜜は半分は自分に。残りは蜂に返す」この循環を見事にぶち壊していく様は本当にドキュメンタリーなのかと疑いたくなる。人間はあまりに脆い。自立しているようにみえて、ある一点を責めると崩れ落ちていく。そんな中でも彼女は負けない。殺風景な自然の中で、搾取されようが立ち直る。険しい谷を登っていく。

人間らしさ、そして余りにも大きく壮大な自然とどう生きていくか…深く、そして広く考えさせられる本作。ぜひ大画面で堪能していただきたい。
ハニーランド 永遠の谷
監督:リューボ・ステファノフ&タマラ・コテフスカ/2019年/北マケドニア/86年/字幕:林かんな

上映スケジュール
9/12(土)~9/18(金)10:30~