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元町映画館☆特集

劇場には忘れられない恋があった。 『彼女は夢で踊る』

いつ無くなるか分からない。だけどいつまでも残って欲しい。

偶然出会った人、たまたま見つけた場所が一生付き合っていくこともある。
いつ無くなるか分からない。だけどいつまでも残って欲しい。
こういう人や場所、皆さんはありませんか。
今年は新型コロナウィルスによって、人生すべてひっくり返ってしまった人もいると思います。また一方で自分を「考える」時間が増えた人も大勢いらっしゃると思います。
今回ご紹介するのはある場所に心奪われた人たちのお話。人の想いってのは言葉で語ると気恥ずかしいけれど、映像を使えば、何だか泣けてくる…不思議なもんです。

今回ご紹介する映画は『彼女は夢で踊る』
広島県にある実在のストリップ劇場を基に、あの時に恋をしていたすべての人々に送るラブストーリー。

ある男子学生が広島県のストリップ劇場に立ち寄り、ある女性に恋をする。時代は変わって現在。大人になったその男性は現在、閉館寸前のストリップ劇場で働いている。
目の前に広がるのは女性たちが踊った舞台、さらにお客さんが座っていた客席。踊り手も客も少なくなり、明日はどうなるか分からない。
そして「いよいよ」となった時、彼の脳裏にあの女性の姿が浮かぶのだった…


話が進んでいくと男性がストリップ劇場を引き継ぐことになったのは偶然。
「やってみるか」という提案を受けて…。
一方で前代表は劇場を残してくれと周囲から頼まれたが、今のところ無理。
若い子に引き継げば、その子も閉館を選び、「時代の流れ」として処理できるだろう…ということらしい。で、実際、閉館の危機に陥っている訳だ。

これを観て、「うん、うん、分かるよ」と思う人はいるんじゃないでしょうか。
今年はとにもかくにもコロナ、コロナ、コロナ。居場所を奪われる人が多い一方で、コロナによって、この先を考える人も大勢いるのではないでしょうか。
「これから、どうなるのか。どうするのか」。

私のいる映画館も同じく、今年は一時休館に追い込まれました。でも、それは仕方がないこと。
一方で「映画館を助けたい」という想いが世の中には溢れていることを知りました。ありがたい話です。
ちょっと話はそれましたが、本作はそんな想いに通ずるところがあります。

「場所を守ること」。簡単な言葉ですが、実行するのは本当に難しい。儲かるようにしないといけない、でもそれをすると「劇場らしさ」が消えてしまう。
映画の中でも「時代の流れ」という言葉が出てきます。
現場にいると分かるのは、楽しんでくれる人はいる…ということ。でも生きていかなけばならない。そんな葛藤の毎日です。
場所を維持する人もそう考えることが多いのではないでしょうか。

映画の本筋はラブストーリーです。偶然出会って恋をする。素敵です。それが忘れられなくて、その場所にいる。
その行為は、場所を守ると同時に出会えることに繋がってきます。劇場を照らすスポットライト。
照らされた舞台上で踊る女性たちは本当に美しい。美しい/キレイなものほど、裏では…みたいなことがあると思います。
本作は舞台裏も描いてくれます。スタッフと演者が一緒にテーブルを囲んでダベる。何も起こりませんが、そこには表の「夢を売る」姿と違い、生きてる姿がある。
現実はもっと殺伐としているのかもしれません。もっとドロドロしているのかもしれません。でもこの90分間の中で酸いも甘いも魅せてくれる。
見えてるんじゃなく、出演者らは魅せてくれます。

と良いことを言いつつも現実は非情でやっかいです。「現実はこんなもんじゃない」と突き詰められるところもあります。
それでも夢に生き続けることを良しとするか悪とするかはお客様次第。出会いは一瞬、想いは永遠。映画の時間軸だから活きてくる。
『彼女は夢で踊る』ぜひ劇場でご覧ください。
彼女は夢で踊る
(監督・脚本・編集:時川英之/2019年/日本95分)

上映スケジュール
12/5(土)~12/11(金)10:30~
12/12(土)~12/17(金)17:30~