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元町映画館☆特集

中国新世代の才能が描いた『春江水暖~しゅんこうすいだん』

厳しい検閲を通り抜けての公開! 都市化が進む街で様々な家族の姿がみえるドラマ

(c)2019 株式会社 音響ハウス
(c)2019 株式会社 音響ハウス
ま~たアジアからすごい映画がやってきました。今回は中国映画。
映画館で働きつつ様々なアジア映画を観てきました。中国は検閲が厳しい国です。映画も例外ではありません。今回ご紹介する作品もそんな厳しい検閲を通り抜けての公開となりました。都市化が進む街で様々な家族の姿がみえるドラマ『春江水暖~しゅんこうすいだん』

中国は江南の水郷地帯、杭州市。
そこにははるか昔から大河、富春江が流れる。母の誕生日を祝うために、家族総出で誕生日会が開かれていた。しかしその場で母は脳卒中により突然倒れてしまう。奇跡的に一命をとりとめた母だったが認知症が進み、介護がなければ生活できなくなってしまう。4人の兄弟とその家族。それぞれの立場を楽しんでいた彼らだったが、母の姿を通して、自分とその環境に向き合うことになるのだが…。

公式サイトでも触れられているように本作の撮り方、特にロングショット圧巻。ただ何となくカメラを回しては絶対に撮れない、人や自然の動き。それを文字で語るのは勿体ないとは思いつつも書きます。川から陸を取ったのだろうか、登場人物が動くたびに画も平行し動いていく。スクリーンに映し出される人間と景色が見事に重なりあったまま映像が流れていく。邪魔なものが何もない。監督曰く、実際に都市化が進む「現在進行形」をカメラで撮ったそうです。ロングショットは家族の重大な話のあとや、ちょっとした事件が起こったあとなどで挿入されます。河の流れる音や街を歩く人々の会話をBGMに、まるで街に見守られるように主役の家族たちはそれぞれの想いを話す。近代化と昔懐かしい街並みのちょうど真ん中にある河が画面に入り込むことで安心感も漂います。計算のうちなのでしょうか。そうであって欲しい。キレイで生命力のある映像、簡単に撮れてほしくない。
とロングショットへの想い、映像へのカッコよさに嫉妬寸前ですが、見所は他にもございます。登場人物たちの会話。本作は母親とその子どもたちの人生を中心に話が進みます。
長男はお金に苦労しており、それを知った妻は自分の娘を権力者の息子に嫁がせようとする。しかし娘には恋人がおり、その申し出を拒絶する…といった具合に関係がどんどん拗れていく。そして母の介護をすることになった長男夫婦たちはどうするのか。家族といってもやっぱり一人の人間。たとえ親に借金があっても自由に生きたい。しかし長男の家族関係も理解している。純粋で、面倒で、どこかに愛がある関係。そして認知症が進む母が絡むことで複雑に、面白く展開していきます。母親の言葉が響きました、「忘れていくけど、これだけは覚えていたよ」。ドラマが積み重なっていくたびに「言葉は大切」だと痛感させられます。

親と子、孫と3世代におよぶ家族映画。計算されたカメラワークに、その街で暮らす人々から発せられる言葉が組み合わされることによって生まれた傑作です。劇的なことは起こりません。でも、日常こそ絵になる。そんな気づきを教えてくれた映画『春江水暖~しゅんこうすいだん』、ぜひスクリーンでお楽しみください。
春江水暖~しゅんこうすいだん
監督・脚本:グー・シャオガン/中国/2019年/150分

上映スケジュール
3/13(土)~3/19(金)12:20より上映
3/20(土)~3/26(金)14:40より上映