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元町映画館☆特集

スニーカーと生意気な白いシャツ…夏がはじまる『スザンヌ、16歳』

ビビット色の強いドリンク、白いシャツ、波長が合わない友達、年上の男性との恋……。

あまずっぺぇな!!青春してんな!!と思った次第です。

初見では。そう本作は恋愛映画、主人公は16歳の女子高生スザンヌ。
いつからだろう、青春映画を観て「若いな~君たち」と思うようになったのは。でも観終わった後フワッとした気持ちになる。あれは何だったんだろう。ビビット色の強いドリンク、白いシャツ、波長が合わない友達、年上の男性との恋……。
観るもの全てが新しく、まっさらな状態で受け止めることも可能。
主人公のスザンヌを通して、あなたは何を感じますか?

こんなお話。
16歳のスザンヌは同世代の友達との会話にもうんざりし、パーティに参加しても浮かない顔。ある日、彼女が学校から帰る途中、歳上男性の舞台俳優ラファエルと出会う。引き寄せられるように出会った2人は恋に落ちるが……。

本作のスザンヌを演じるのは二十歳の新鋭、スザンヌ・ランドン。なんと彼女、本作では監督、脚本もつとめます。スザンヌ自身の思春期の憂鬱さや恋愛、当時感じ取ったことが描かれているそう。でもそれを聞けばきくほど、なんてお洒落な青春時代を送っているんだスザンヌ!!。友達とのいつもの絡みが急に面倒になったり、家族の前で猫をかぶってみたり、通学路でどこか遠くを見たり……。
私も正直、そんな経験あったけど、こんなお洒落な空気感出せなかったよ!

特にこの映画すごいなと思ったところ。
青春時代のだるさ、何をするにも面倒なことって経験したことある方多いのでは?
ちょっと背伸びしたり、今でいうと「中二病」みたいなこと。自分の知らない世界を知るために危ないところに手を出しちゃうみたいな。それがホント嫌味なく演出されている本作。その子ども→大人への近道っつんですかね、そのキーアイテムになっているのが歳上との恋愛なんですよね。

いや、はじめはオイオイと思ったんですが、映画の空気、出会いがあまりに自然で、日本だったらありえないというかちょっと目を瞑って見てしまうような甘い展開。でもそこはパリ。二人が絵になる。パリの街なみが二人をお祝いしているような不思議な感じ。そして相手の年上男性ラファエルがなかなかの曲者。

ラファエルは舞台俳優。スザンヌから見れば、今までになかったタイプの大人。そんな彼が急に目の前に現れる。ひと目で恋に落ちる二人……と話を聞けば「素敵!」と思わせる展開だが、年齢を聞けば「ええ、いいの?」と思ってしまう。でもそこは映画。もう一度言います、これは映画です。

そして始まる二人の交流。カフェでお話をしたり、好きなドリンクを一緒に飲んだり、ちょっと遠出したり、限られた時間の中をすごす二人。その時間は一生戻らないことを知っているから。ラファエルが一方的にスザンヌに恋をすればするほど、どことなく離れていくスザンヌがまたいい!スザンヌもこの関係がいつまでも続くとは口には出さないけれど、思っている。分かった上で時間を共有しているのかもしれない。20代、30代……では気づけない、10代だから見える景色があるのかもしれない。

本作はそんな登場人物の感情を説明してくれない。ごくごくシンプルに一切の説明は省かれています。それが若干20歳のスザンヌ・ランドンの選んだ撮り方。これが初監督とは恐ろしい。リアルタイムで、彼女のデビュー作を映画館で観たことは今後10年自慢しても良いと思います。ぜひスクリーンでお楽しみください。
スザンヌ、16歳
(監督:スザンヌ・ランドン/2020年/フランス/77分)

上映スケジュール
9/11(土)~9/17(金)16:20~

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